2011年7月15日金曜日

イランから招待された海上自衛隊 ~ ペルシャ湾の掃海部隊

JJ太郎さんの「かつて日本は美しかった」からの転載です。
http://ameblo.jp/jjtaro/entry-10947657154.html

イランから招待された海上自衛隊

 平成2年(1990年)の湾岸戦争後、日本海上自衛隊は掃海部隊を派遣し、残された機雷を処理しています。自衛隊員たちは過酷な環境下で危険な作業を行いました。ペルシャ湾は日本では経験できない40度の高温であり、晴天で太陽が真上に来るころには50度になります。イラクは油田に火をつけましたから、その煤煙もひどいもので、鼻を突く悪臭とともに黒い雨が降ってきました。また、陸地に近いところではたちの悪い蚊やハエが大挙して船を襲ってきて、噛まれると半月は傷が直らなかったといいます。
 掃海部隊はMDA-7と呼ばれる海域で掃海を行いましたが、ヨーロッパ勢は平成3年7月終わりごろに引き揚げてしまいました。日本はアメリカと共同で引き続き過酷な環境下でMDA-10と呼ばれる海域を掃海することになります。この海域にはイランの海域が含まれており、外交上難しいものがありました。イランとアメリカは国交が正常化されていません。また、この海域にはイタリア製の沈底式感応機雷「マンタ」があり、これがやっかいでした。
日本は外交努力をしてイランと交渉し、イランの士官2名を連絡士官として掃海母艦「はやせ」に乗せることで同意を取り付けることに成功しました。「はやせ」にはアメリカの連絡士官が乗っていましたから、「はやせ」上にアメリカとイランという敵国同士の軍人が顔をあわせることになったのです。これは随分と懸念されましたが、アメリカの連絡士官ストーフ大尉があっけらかんとした態度で積極的にイラン士官と軟らかく会話したおかげで何事もなく無事に事が進みました。

 そしてイランは日本掃海部隊をバンダル・アッバーズ港へ寄港要請してくれたのです。
「イラン国民とイラン海軍は、日本海軍掃海部隊のイラン訪問を国を挙げて歓迎する」


ホルムズ海峡ではイラン海軍がエスコートの艦を派遣し、港に近づくともう1隻が加わるという厚遇ぶりでした。8月22日には大勢のイラン海軍関係者、イラン日本大使館公使、在留日本人会代表、駐在武官、バーレーンの防衛庁部員に迎えられました。

イランでは海軍の各施設見学や交歓会が行われ、古都シラーズの史跡観光が実施されました。シラーズで飛行機から降りた掃海隊員は
赤い絨毯が敷かれ州知事が出迎えるという国賓並の待遇でした。イラン人は日本人にかなり好意を持っていました。日本で昭和58年(1983年)に「おしん」というテレビドラマがヒットしましたが、これがイランで大人気となり、上陸した隊員たちが街を歩いていると「おしん」「おしん」と指差さされました。また、イラン・イラク戦争のときイランはペルシャ湾を航行する外国船舶に攻撃を仕掛けましたが、日本の船には攻撃しなかったといいます。
 イランの教科書に日本について次のように書かれているといいます。「日本は大国ロシアと戦い、東郷元帥の率いる日本艦隊はロシアのバルチック艦隊を壊滅させた。また、第二次世界大戦では連合国に負けて焦土と化した国土を立派に復興させ、世界第二位の経済大国に発展させた。イランも日本人を見習い、国土の発展に尽くさなければならない」

イラン海軍への答礼パーティに出席したイラン人僧侶は次のように語りました。
「今回の日本海軍の招待は、イランはこれからも日本と協力し合って両国が発展することを望んでいる証であり、日本の発展に必要な石油、天然ガス、ウラン、ボーキサイトなどは日本が必要なだけイランから供給できる。ついては、イランの子供達が国家の発展に尽くすために必要な日本の技術を提供して頂きたく、ペルシャ湾での作業を終えて帰国されたら、一人でも多くの日本の皆さんにこのことを伝えて欲しいのです」

イランはイスラム原理主義の国です。イスラム原理主義の国は総じてアメリカなどキリスト教徒の国とは仲が悪い。日本はキリスト教徒の国ではなく、神道の国で、宗教に関しては寛大な国です。欧米などの白人国家には出来ない世界貢献が日本にはできるような気がします。この後に起こったイラク戦争でもアメリカに追随するのではなく、違うことが出来なかったか。パレスチナ問題の「平和と繁栄の回廊」のように日本がリードしてもっと何かできるかもしれません。



参考文献
光人社「ペルシャ湾の軍艦旗」碇義朗(著)
参考サイト
 
「湾岸の夜明け作戦」 落合畯 http://www.mod.go.jp/msdf/mf/touksyu/yoakenosakusen.pdf
 
「湾岸の夜明け」作戦に掃海部隊派遣(「海上自衛隊50年史」から抜粋) http://www.mod.go.jp/msdf/mf/touksyu/wanngann.pdf

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