2011年7月25日月曜日

占領統治の実際

サンフランシスコ講和条約の発効に至るまでの非独立の占領時代には、連合軍の軍事的支配の下、我が国の政治、法制、経済、教育及び文化などのすべての事象において大きな変革が強要された。

GHQ/SCAP(以下、GHQ)の軍事占領下で最も大きな強制的変革は、帝国憲法を全面改正したとされる日本国憲法という名の「占領憲法」の制定である。
占領統治下においては、占領政策に迎合する「御用民主勢力」以外の意見は完全に黙殺され、出版物、手紙その他の文章を検閲し、占領政策の妨げとなる一切の言論を禁止し、GHQの占領政策を批判する記事は発行禁止処分の制裁を受けるなど、臣民(国民)の政治的意思形成に必要な情報を一切提供させないようにする『日本プレスコード指令』による強力な言論・報道統制が断行された。

『日本プレスコード指令』とは、GHQ司令官であるマッカーサーが発令してもので、『言論及び新聞の自由に関する覚え書き』、『日本に与えうる新聞準則』などによる一連の言論、新聞、報道の規制と検閲制度全体を指す。これらによる削除、発行禁止処分の対象となる項目は、①SCAPに対するいかなる一般的批判、及びSCAP指揮下のいかなる部署に対する批判、②極東軍事裁判批判、③SCAPが憲法を起草したことに対する批判、④検閲制度への言及、⑤合衆国、ロシア、英国、朝鮮人、中国、田の連合国に対する批判、など三十項目に及んでいた。

言論・報道の統制が行われているかたわら、戦争犯罪人であるとか、軍国主義者であるとの一方的な理由で多くの官僚、代議士などの政治家が公職追放された。衆議院議員四百六十六名のうち、八割以上に該当する三百八十一名が追放されたとされている。

これらの対日検閲計画は、大東亜戦争開戦の翌日に、J・エドワード・フーヴァーFBI長官が検閲局長官臨時代理に任命されたときから用意周到に準備されてきたもので、第二次近衛内閣の「挙国的世論の形成」を図る目的で作られた情報局などのような戦時体制下における情報統制よりも遥かに厳しいものであった。

そのため、憲法改正案を審議した第九十回帝国議会を構成する議員を選出した総選挙においても、改正案の全文は選挙前には公表されず、改正案全文が発表されたのは選挙から十日後であった。この憲法改正案は、公職追放の危険による萎縮効果もあって、選挙での争点には全くならなかった。
これらの措置は、占領下で制定された占領憲法の「法の下の平等」、「表現の自由」、「検閲の禁止」などに明らかに抵触するものであり、帝国憲法の「言論・著作・印行・集会・結社の自由」にも違反する違憲措置であって、現行の公職選挙法の規定によれば、選挙自体が無効であることは明白である。

公職追放の他にも「魔女狩り」にも似た「公開リンチ」の極め付きとしての極東国際軍事裁判がさらに萎縮効果は大きくした。
極東国際軍事裁判では東条英機元首相ら二十八名が共同謀議によって侵略戦争を指導したとして起訴され、二十五名に有罪判決が下され、マニラやその他の東亜・太平洋地域において、適正な手続きや法的根拠に基づかずに「裁判」という名前のリンチによって、総勢九百九十四人が処刑されている。

このような事実を、日本のマスメディアは、批判するどころか、発売禁止処分を恐れて言論統制や検閲に何ら抵抗することなく、ジャーナリストの良心と魂を売り飛ばして御用新聞・御用放送に成り果て、連合軍の行う一連の措置が正当であるかのような大衆世論操作に加担した。

その言論統制と検閲を担ったのが、マスメディア各社で設立された「財団法人日本新聞協会」である。これは現在も存続しており、表向きは「民主主義的新聞社」の団体であると言いながら、GHQの検閲とプレスコードを受容して命を永らえた集団である。NHKや民法などのテレビ各社も加入し、「新聞倫理綱領」なるものを定めて、「民主主義」の旗手のように偽装しているが、同社団に所属しない中小メディアを閉め出した「記者クラブ」というギルド性によって特権を固守し、GHQなき後も、忠実にその指導方針(東京裁判史観)を堅持している。
この財団法人日本新聞協会に所属するマスメディアは、占領当初から与えられた敗戦利得者としての利権を固守し、連合軍の占領政策を支持することによって真の自由と民主主義が生まれるとの「世論」を形成させ、衆愚政治における「大衆の喝采」を得ることに成功した。
こうして民主主義の基本であるべき正しい政治的情報を知る権利が全く与えられない愚民政治が出現したのである。

本来ならナチス・ドイツによるユダヤ人やジプシー等の大量殺戮に勝るとも劣らない広島及び長崎の原爆投下による無差別大量殺戮(ホロコースト)が非難されるべきであり、今日でもその意義は風化していないが、「日本がいつまでも降伏せずに戦争を続けたために落とされたのであり、早く降伏して戦争をやめていれば落とされずに済んだのであるから、原爆投下の責任は日本にある」という占領軍の流したデマのような洗脳から解かれていない有様である。このことだけを見ても、占領政策による言論と報道の統制は非常に効果的に行われたと考えるべきである。


参考文献:國體護持総論<普及版シリーズ第二巻>「かへるうぶすな」南出喜久治著

注)参考文献より一部を抜粋、要約して投稿しています。原文は本著を御一読ください。

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